コラム

真美のコラム

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真美のコラム

税務・税金というと難解な専門用語が多くて堅い内容になりがちですので、このページでは、税務・税金のこと、旬の話題、私が思ったことなど、むずかしい用語もわかりやすい表現で、つれづれなるままに掲載していこうと思います。

一筋縄ではいかない(?)親族間での
不動産の贈与・譲渡

最近、親族間での不動産の贈与や譲渡についてのご相談が増えています。
ある方からは「賃貸用ワンルームマンションを所有しているが、このまま自分の名義にしておくと、相続の際に前妻との間にもうけた息子と現在の妻との間で遺産分割をしなければならなくなるので、今のうちに妻に名義を移したい」というご相談がありました。
また、ある方からは「現在住んでいる自宅を父親からの相続によって取得したが、妹にも半分の持分があるままなので(妹の)持分をすべて買取りたい」というご相談がありました。
 
一般に親族間では、金銭のやり取りをしないで不動産の名義を移したり、通常の不動産取引ではあり得ないような極端な優遇価格で不動産が売買されることも多く、国税庁や国税局などの課税庁は、このような親族間での贈与・譲渡には目を光らせています。税金は本来、利益に対してかかるものなのですが、不動産を無償または優遇価格で取得した人の場合には、本来の買取り価格との差額分の利益があったとみなされるのです。
 
例えば、父親が時価3,000万円のマンションを、1,000万円で息子に売却した場合には、以下の申告が必要です。
①父親は、1,000万円の譲渡所得の申告(ただし、譲渡益がない場合には申告は不要)
②息子は、3,000万円-1,000万円=2,000万円の贈与税の申告(贈与税額は5,855,000円)
 
また、親族間での不動産売買は「時価」で行わなければならないのですが、この時価については明確な規定はなく、マンションの一室であれば「同じ階の同じ間取りの部屋が、いくらで市場に出ているか?」を参考にしたり、不動産鑑定士にその部屋の鑑定を依頼したりします。「固定資産税評価額は、時価のおよそ7割」また「相続税評価額は、時価のおよそ8割」と言われていますので、評価額での売買であっても、時価より低い価格となります。
しかし、相続税評価額で行った親族間の売買が「低額譲渡ではない」と認められた判例(東京地裁平成19年8月23日(行ウ)第562号裁決)もありますので「相続税評価額以上の価格」で売買すれば、課税庁からの"お咎め"はないかと思われます。
 
親族間での不動産の贈与・売買で最も重要なのは「適正な時価」の妥当性です。相続税評価額は、単純に「路線価×面積」で済むというものではありません。土地の形状によっては、かなり評価額を下げられる場合があります。
評価が下がれば、その分、贈与税も緩和できますので、親族間での不動産の贈与・譲渡をお考えの場合には、ぜひ事前にご相談ください。

相続税が見込まれる場合は、
贈与は年間110万を超えてするのがお得!

相続税申告の受任を受けて業務を進めさせていただく際には、その相続が一次相続であれば、必ず二次相続のシュミレーションをして、一次相続で「配偶者控除をどこまで使うのが最も有利であるか」を試算します。相続税の配偶者控除は「1億6千万円までの遺産について、配偶者であれば無税で移転できる」という、たいへんありがたい制度です。しかしながら配偶者も、そう遠くない将来に亡くなる可能性が高いために、あまりこの制度に頼ってしまうと、二次相続での相続税額が多くなってしまうという"落とし穴"もあります。
 
二次相続のシュミレーションとしては「毎年110万円の基礎控除内で、他の相続人に贈与を行って財産を減らすこと」をお勧めするのですが、通常は、基本的に「一次相続で受けた財産は、それほど目減りしない」と仮定して、少し厳しいくらいの試算を行います。このような業務を行っているなかで、私が最近感じることは「贈与に対して、110万円の基礎控除の枠に囚われてすぎていないか?」という点です。
 
相続税は安い(?)とはいえ最低税率が10%ですので、基礎控除を超えた部分に対して最低でも10%の相続税が課税されます。これに対して、贈与税の場合は、

● 年間110万円までは無税
● 年間200万円の場合の贈与税は、年9万円で実質4.5%
● 年間300万円の場合の贈与税は、年19万円で実質6.3%

となっており、親族間の場合では、年間500万円までの贈与であれば、相続税の最低税率10%を下回ります。一般に「贈与税は高い」というイメージがありますが、それは高額な贈与を受けた場合で、少ないお金をコツコツと贈与していく場合は、実は贈与税は相続税よりお得です。
 
例を挙げると、以下のような条件の場合には、下記のような2通りのパターンが考えられます。
● 一次相続での遺産総額:1億5千万円
● 相続人:配偶者+子供2人(合計3人)
● 配偶者固有財産:0(ゼロ)

パターン①

トータル税額:971.74万円

一時相続時の財産:1億5千万円 → 配偶者:5,250万円の相続、子供2人:それぞれ4,875万円ずつ相続 → 相続税:971.74万円
     ▼
二次相続までに、年間110万円×2人×10年で2,200万円贈与して財産を減らす。
     ▼
二次相続時の財産:5,250万円-2,200万円=3,050万円 → 基礎控除以下で申告不要
※ちなみにこのパターンは、私の使用している相続税計算ソフトでは一番有利とされる方法です。

パターン②

トータル税額:560万円

一次相続時の財産:1億5千万円 → 配偶者が1億5千万円すべてを相続 → 相続税:0円
     ▼
二次相続までに、年間300万円×2人×10年で6,000万円贈与して財産を減らす。
また、子供の配偶者などにも年間100万円×2人×10年で2,000万円を贈与。
さらに、孫への教育資金として1,000万円の贈与(非課税)を実行。
     ▼
二次相続時の財産:1億5千万円-(6,000万円+2,000万円+1,000万円)=6,000万円 → 相続税:180万円(Ⓐ)
贈与税:年19万円×2人×10年=380万円(Ⓑ)
相続税(180万円Ⓐ)+ 贈与税(380万円Ⓑ)=560万円
※贈与は相続人以外に対してもできることから、それをうまく活用した例です。
※相続開始前3年以内贈与財産は、相続税に加算されるため注意が必要です。
 
いかがでしょうか? パターン②の方が一次相続・二次相続+贈与税をトータルで考えた場合に、約400万円の税額が抑えられます。
もちろん「二次相続までに時間がなく、贈与によって財産を減らせない」などといったリスクはありますが、一次相続から二次相続までに相応の期間がある場合や、二次相続での相続人(通常は子供)が多い、または孫が多いという場合などは「贈与」はたいへん有効な手段だと考えられます。もちろん、一次相続対策にも110万円を超えた贈与はたいへん有効となります。
このように「110万円の基礎控除」に囚われずに、積極的な贈与による相続税対策をご検討ください。

小学校の「租税教室」に
学ぶ

私が、国税庁主催の「小学生向けの租税教室」の講師を担当して6年になります。
この授業は、おもに小学6年生の生徒さんに、
「税金って何だろう?」
「税金は、どのように使われているのだろう?」
「税金がなかったら、どうなるのだろう?」
といった内容を、ビデオなどを使って説明して、"未来の納税者"に対して税金の正しい理解を促すことが目的のプログラムです。
 
当初、私は「これはある種の"洗脳教育"ではないか?」との懸念もありましたが、最近では「小さい頃から税のことを知るのは大切で、日本の未来にとっても重要な教育だ」と考えるようになり、このプログラムに真剣に取り組んでいます。
税理士をしていて思うのは、世の中には「税金が嫌いで、どうしても納めたくない人」と「好きではないけれど、ある程度割り切って納めている人」がいて、「どうしても納めたくない人」には、税金は利益に応じて平等に決められたものであって損得ではないということを、どんなに説明しても(税金への)嫌悪感を払拭することは難しいということです。
 
この「租税教室」では、税金を納めることで、家庭ゴミを収集してもらえたり、緊急時に消防車や救急車のお世話になれたり、整備された公園で自由に遊べたり、毎日、楽しく学校に通えたりできるんだということ、すなわち税金とは「社会共通の費用をまかなう会費」のようなものだと伝えています。
 
まさにその通りで、私たちは嫌でも税金の恩恵を受けて日常生活を送っています。「大人になって働いて稼げるようになった時に、利益の一部を社会に還元する」という仕組みは(私は)それほど不条理なことではないと思っているのですが、いかがでしょう?
また、最近ご相談が増えている「相続税」で例を挙げると…親が亡くなって、5,000万円の価値の資産を兄弟2人で相続する場合には、5,000万円から4,200万円の基礎控除を差し引いた800万円に対して10%(=80万円)の税金がかかります。5,000万円を稼ぐのは、もちろんたいへんなことですが、80万円の税金を納めることで、それが正式に自分たちのものになるということに対して「一般庶民から税金を取ってけしからん!」と考えるか「安心できて、ありがたい」と考えるかは、その人しだいです。
 
ニュースで汚職問題などがクローズアップされると「もう税金なんか絶対に払いたくない」と思う気持ちも良くわかります。ただ私は、物事すべてそうであるように、ごく一部の悪いことだけに目を向けて全部を拒絶してしまうのでなく、良い部分にも目を向けられる"許容量"を、いつも持ち合わせていたいと思っています。税金は、とても身近なものですから、ストレスをためることなく上手に付き合っていきたいですね。

「後妻業の女」に学ぶ!?
税務上のポイント

現在、大竹しのぶさん主演の映画「後妻業(ごさいぎょう)の女」が公開されています。この映画では、前妻に先立たれて結婚相談所に登録している資産家老人を狙って後妻に入り、公正証書の遺言を書かせて、遺産を相続することを業(なりわい)としている恐ろしい熟年女性・武内小夜子と、それを裏で操る結婚相談所長・柏木享(この役は、イケメン俳優・豊川悦司さんが演じています)の、金と欲にまみれた人間模様が描かれた映画です。
先日、私はこの映画の原作「後妻業」(黒川博行さん著)を読みました。フィクションでありながら、父親の死と遺産相続における娘たちの困惑や、遺産相続の手続きのことなども、けっこうリアルに描かれてる、おもしろい小説でした。そこで私は税理士の立場から、この小説から学べる(?)税務上のポイントを、3つ紹介してみます。

内縁の妻に、相続権はあるのか?

ストーリーのなかで主人公・小夜子は、複数の資産家老人をダマして遺産を相続しています。その手口は、ある時は籍を入れた本妻として、またある時は、籍は入れずに内縁の妻という立場で「相続権」を行使しているのですが、この「内縁の妻」には、法的相続権はあるのでしょうか?
民法が定める法定相続人は「配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹」となっていますが、これはあくまで法律上の配偶者・親子・兄弟姉妹の関係にある人を指していて、事実上の婚姻関係などは含まれていません。したがって、内縁の妻には法的な相続権はないのです。

公正証書遺言の威力は絶大!?

では、小夜子は「内縁の妻」であったにもかかわらず、どうして多額の遺産を受け取ることができたのでしょうか?
そこでポイントとなるのが「公正証書遺言」です。遺言であれば、法定相続人以外の人に自分の財産を遺贈することができるのです。しかも公正証書遺言は、公証人という第三者を通じて作成しますので、要式上の不備はあり得ませんし、自筆遺言のように「本物か、偽物か」という議論の余地もなく、また、破棄・隠匿・改ざんされるリスクもありません。したがって、その有効性が否定されることは、ほとんどありません。
小夜子は、資産家老人の身の回りの世話をろくにしないにもかかわらず、公正証書遺言を書かせてしまい、この公正証書の遺言の効力を逆手に取って「内縁」という法的根拠の薄い事実を最大限に利用して、遺産のほぼ100%を自分に遺贈させるように巧みに段取りをしています。

相続人には最低限の相続財産がある!

それならば、(この物語のように)ある日突然現れた内縁の妻が「公正証書遺言」を振りかざして、親の財産のほぼすべてを強奪していくなどという事態を(法定相続人である)娘たちは、ただ黙って受け入れるしかないのでしょうか?
答えは、否! 法律上、法定相続人には「遺留分(いりゅうぶん)」という最低限度認められる相続分(各相続人の法定相続分の2分の1)があります。この遺留分が侵害されるような場合には、相手に対して(この遺留分を受け取るための)「遺留分減殺請求」ができます。そしてそれが相続人間での話し合いで解決できなければ、家庭裁判所での調停、それでも解決しなければ裁判ということになります。
小説のなかでも、この「遺留分」を侵害された次女が、同級生の弁護士とタッグを組んで裁判に持ちこむ意思をチラつかせることによって、(過去の数々の不審死の実態が発覚することを恐れる)小夜子に、推定の遺留分を返済させる約束を取り付けることに成功しています。